2020年1月から始まった新型コロナ感染拡大防止の影響で、まちは短い間で大きく変化しています。
新型コロナウィルスは、人体の呼吸器系に打撃を与えるだけでなく、
人と出会い、話し、困った時は助け合う、人間同士の交流を破壊していきました。
このような緊急事態において、飲食店などの個人店は大きく打撃を受け、働く人たちは絶望に追いやられています。
そんな大変な状況の中で、新しい生き方を模索する人、人の役に立つために何ができるか考える人、新しいアイディアを実行する人たちが、まちにいることに気付きました。
「制限こそ、クリエイティブの源」を地で行く人たちの活動を紹介し、応援したい。そんな気持ちでこの連載を始めました。
もしかしたらアフターコロナの世界から見たら、方向違いの試行錯誤があるのかもしれない。
それでも、ウィズコロナの時代を生きる私たちは、もがき、苦しみ、その中で新しいまちを作り出そうとしています。
その記録を残しておきたいと思います。
記事作成:織田博子(記事一覧)
食を旅するイラストレーター/マンガ家。
「世界家庭料理の旅」をテーマとして、ユーラシア大陸一周半旅行に行ってきました。
池ブルックリンでは絵と食べるの担当。
公式サイトはこちら
マンガ「世界を旅する母ちゃん 駒込で子育て」(しろいぶた書房)、旅のコミックエッセイ「女一匹シベリア鉄道の旅」、「女一匹シルクロードの旅」、「女一匹冬のシベリア鉄道の旅」「女一匹冬のシベリア鉄道 特製余録」「北欧!自由気ままに子連れ旅」「世界家庭料理の旅」「世界家庭料理の旅 おかわり」(イースト・プレス)出版。
Contents
先の見えないこんな時代にこそ、「祝うべきことは大げさに思い切り祝う」くす玉づくりを提案する井上ヤスミチさん
豊島区内でも精力的に活躍する、画家の井上ヤスミチさん。南長崎公園のトイレのアートを作成したことでも有名です。
記事:こども、おとな、としより、めぐる、ぐるぐる 井上ヤスミチ作 (東京都豊島区)
仕事が減ったことや、お子さんたちの通う学校の休校を受けて生活は大きく変わりました。
イベント関連の仕事が2月からなくなった
新型コロナ流行以前はどのような仕事をされていましたか
自宅アトリエで取り組む絵画制作(展示会やネットで展示・販売)、自宅アトリエで取り組むイラストの受注制作、イベント会場等でおこなうフェイスペイント、イベント会場等で行う子ども向けの工作ワークショップ
新型コロナ流行の後はどのような変化がありましたか
家に子ども3人が毎日いるようになって、じっくり集中して絵の具で絵を描くことが多少難しくなってる。寝静まっている夜明け前~朝にやってみたりしている。発表の場である合同展も自粛の傾向が多い。
画家・イラストレーターと言いながら、フェイスペイントと工作の講師としての収入が売上の半分を占めていて、これらが2月から全部なくなりました。
収入面の打撃もありますが、外に出て直接人と触れ合ったり話したりする機会がなくなったことも寂しいです。
工作ワークショップに関しては、打ち合わせを重ねて楽しみにしていた企画ができなくなった悲しさも。
家でできるイラストの仕事はむしろ大歓迎で、コロナを機に業態が変わって新たなPRのためにイラストが必要な場合など、お気軽にご相談ください。
現在やってみていることを教えてください。
2月末に休校の宣言が出て、これは大変だと思って、絵が好きな子どもたちが集えるネット上のお絵かきの会「コロナに負けないお絵かきの会オンライン」を急遽立ち上げ、春休みの終わりまで平日毎日午後に開催しました。
3月のあいだに状況がだんだん見えてきて、深刻であること、長期化しそうであることがわかり、GWのイベント等も休止になるだろうから他の収入源を考えなければというところ。
くす玉は、今この状況で必要なもの
そこで、池袋ローカルゲートで「箱型くすだま」を販売できないか(もともとはくすだま作りワークショップをする予定だったがワークショップができなくなった)という提案をいただきました。
販売してみたらそこそこ売れて、なによりも買ってひらいたお客さんに会えて反応をダイレクトに聞けて、今この状況で必要なものだなと実感し、くすだまの販売を始めることに。
趣味のくすだまは2005年から作り始めていて、2006年にはmixiでコミュニティを作って作り方を公開し、そこでつくったひらいた報告をし合ったりしていました。
現在はFacebookページ「くすだまで生活を楽しく」で作り方など見られます。
「くす玉が売っていて助かった」
「身近にある材料で手作りしてひらこう」というコンセプトだったので、僕が作ったものを販売したことはほとんどありません。
今回の池袋ローカルゲートで買ってくれた人から「自分が作るのはハードルが高いので、売っていて助かった」という反応があり、完成品を売るのも悪くないなと思いました。
ご縁のあるお店で委託販売というていで置いてもらい、お店で誕生日や記念日にしょっちゅうくすだまをひらいてもらえたら、コミュニティの繋がり作りにちょっとだけ貢献できるかも。
当初の「つくってひらく」というコンセプトも大事にしたかったので、材料をひとまとめにして箱に詰めて、詳細なつくりかた説明書きとともにお届けする「箱型くすだまつくろうセット」も考案し、販売し始めました。
おかげさまで、この状況下で入学・入園がなし崩しになっている家だとか、お誕生日祝いや母の日の演出等にたくさん買っていただき、「つくったよ、ひらいたよ」という報告の動画が届いたりすることもあって、それを見るのがとても嬉しいです。
どんな未来の形を描いていますか?
終息したら、みんなでくすだまを持ち寄って一斉にひらいて祝福する「おひらきまつり」をしたいな、などと妄想しつつ、とにかく長期戦になるでしょうから、イライラを溜め込まず、面白いことを探しつつ、頑張りすぎてパンクしてしまわないようにマイペースで過ごしていこうと思っています。 くすだま、一家に一つおすすめします!
あと、イラストのご相談はお気軽にどうぞ、お待ちしております。
不要不急のものこそ、人生に大切なもの。
インタビューの中で印象に残った言葉。
「くす玉が売っていて助かった」と言った方も、一生のうちで口にする機会があると思わなかったのでは。
それほど私たちを取り巻く状況は異常なのかもしれません。
でも、そんな大変な中でもユーモアや、楽しさを忘れない。そんなメッセージをもらった気がします。
井上さんのイラストは、たくさんの大人や子供が描かれていて、一人一人が個性豊かな動きをしています。
いつかまた、井上さんの作品のように、みんなで笑顔で集まれますように。もちろん、「おひらきまつり」のためにくす玉を持ってね。
井上ヤスミチさんの情報
ローカルミーツ 駅での 22 日間。そして、まちの今。<後編>(2020/5/7としまscope)