風の歌を聴きながらビールを飲もう!

次号のMIOSKは、「豊島区とビール」特集!

個性豊かな池ブルックリンメンバーが贈る「ビール×〇〇」の記事、第二弾です!
池ブルックリンメンバーを驚愕させたビール・フリークの新メンバー、秋元志保さんがビールと小説のペアリングをしてみました。
ぜひお楽しみください。

 

小説を読んでビールが飲みたくなる⁈

年始から始まりました、池ブルックリンのビール×○○企画!今回は【ビール×小説】です。

小説にビールが出てくる作品はいろいろあるのですが、中でも読み始めると無性にビールが飲みたくなってしまう小説ナンバーワンは、村上春樹の『風の歌を聴け』です。(完全なる私見ですが。)

村上春樹というと「ウイスキー」のイメージが強いかもしれませんが、その作品の多くで「ビール」も活躍しています。一部を抜粋しても「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」「ダンス・ダンス・ダンス」「ねじまき鳥のクロニクル」など名作揃いです。

「風の歌を聴け」の文章より、ビールについての表現をpick up!

では、作品の中でビールはどのような効果をもたらしているのか?『風の歌を聴け』の文章から検証してみましょう。

P15「一夏中かけて、僕と鼠はまるで何かに取り憑かれたように25メートル・プール一杯分ばかりのビールを飲み干し、「ジェイズ・バー」の床いっぱいに5センチの厚さにピーナッツの殻をまきちらした。そしてそれは、そうでもしなければ生き残れないくらい退屈な夏であった。

P22「何故ビールなんて飲む?」(省略)「ビールの良いところはね、全部小便になって出ちまうことだね。ワン・アウト一塁ダブルプレー、何も残りゃしない。」

P97「その夜、鼠は一滴もビールを飲まなかった。これは決して良い兆候ではない。」

《退屈+ビール=FUN》ビールは退屈な時間を楽しい時間に変えてくれるが、刹那的で潔い飲み物であるとの見解が読み取れます。

ひとときの高揚感で人との距離を近づけ、楽しい時間を共有することができる優れた飲み物でありながらその酔い(FUN)は一時的なものであり、時間とともに身体からも心からも跡形もなく消えてしまうのです。

ビールがほろ苦いのはその存在の脆さが出会いと別れを繰り返す私たちの人生を彷彿とさせるからかもしれません。「楽しくて儚い」青春時代の象徴としてこれ以上似合う飲み物はないのかもしれませんね。

「僕」が飲んでるのはどんなビール?勝手に検証してみました!

さて、ビールの話をしていたら飲みたくなってきたので、次はこの作品『風の歌を聴け』をテーマに【ビール×小説】のペアリングをしてみたいと思います。

【ビール×小説】のペアリングとは、小説に出てくるビールは実在するどのビールなのかを勝手に検証する、端的に言えば大好きな小説を読みながら、大好きなビールについて妄想するという本好き、ビール好きにはたまらない試みです。

早速、検証スタート!まずは『風の歌を聴け』に掲載されているビール×フードのペアリングを見ていきます。

・ビールとピーナッツ

・ビールとコーンビーフのサンドウィッチ

・ビールとフライド・ポテト

小説では中国人のジェイが経営する「ジェイズ・バー」でビールを飲むシーンがほとんどなので、一緒に出てくる食べ物も手軽な物ばかりです。
これらのフードに合って、「一夏中かけて」二人で「25メートル・プール一杯分ばかりのビール」を飲み干せそうなビールといえば・・・ということでこちらのビールをチョイスしてみました。

「バドワイザー」

言わずと知れた《THE KING OF BEERS》。

生産者のアンハイザー・ブッシュ・インベブ社は1876年ミズーリ州セントルイスで誕生。
現在はベルギーのルーヴェンに本拠を置く酒類メーカーに成長し、世界のビールの30%のシェアを占めています。

中でも「バドワイザー」は、世界初の冷凍技術で生産されたアメリカンラガービールの代表。
二次発酵にピーチウッド(ぶなの木)を用いているので、さわやかな中にもほんのり甘みが感じられるこのビールは現在も世界中から愛され続けています。

小説の設定は「夏」。

夏の暑い日に少し薄暗いバーのカウンターで、キンキンに冷えた瓶ビールを清々しいくらいにガンガン飲んでいく若い男の子二人。

初めての海外ビールが「バドワイザー」だと言う人も多い、知名度の高さと手軽さ。

キレイな黄金色が若々しさを感じさせ、ライトボディで苦みが少なく飲みやすい、軽食に合い、値段も手頃で、オーナーのジェイがビールの銘柄にこだわるような性格でもなさそうなイメージより導きだしました。

「ハイネケン」「コロナ・エキストラ」あたりとも迷うところではありますが、「ハイネケン」よりもよりクセがなく、「コロナ・エキストラ」よりビールの味に存在感がある「バドワイザー」に私の清き一票を捧げたいと思います。

ビールという飲み物はとにかく懐が深く、気心知れた友人と楽しく飲むもよし、これから仲良くなりたい人と心の扉を開くきっかけとして飲むもよし、小説の登場人物になったつもりで飲むのもよし、こだわりのビールを蘊蓄たれながら飲むもよしなのです。

《とりあえずビール》文化が廃れてきている昨今ですが、楽しい気分になりたいならご一緒に《とりあえずビール》でも飲んでみませんか?(くれぐれもプール一杯分は飲まないように、ご自分の適量で♪)

『ビールがなければハッピーはない』秋元志保でした。(敬称略)

参考文献:「風の歌を聴け」村上春樹(2004年 講談社文庫)

ライター:秋元志保

特定行政書士、申請取次行政書士。周りの人を笑顔にする頼れる行政書士を目指して日々奮闘中です。プライベートではビールが大好きで、instagramはビールづくし。

instagram@shihopenguin