上池袋のロシア人が作るチョコレートショップ「カカオ工房トリビュート」が気になりすぎて、インタビューしてきたよ!

去年の3月、上池袋にチョコレート専門店ができました。

チョコレート専門店が日本でも増えているのはなんとなく知ってたけど、池袋にできたのが面白いなと思っていると、オーナーはロシア出身とのこと。

ロシアでチョコレートで、池袋?!その不思議な組み合わせに興味を持ち、早速行ってきました!


記事作成:織田博子(記事一覧
食を旅するイラストレーター/マンガ家。
「世界家庭料理の旅」をテーマとして、ユーラシア大陸一周半旅行に行ってきました。
池ブルックリンでは絵と食べるの担当。
公式サイトはこちら

マンガ「世界を旅する母ちゃん 駒込で子育て」(しろいぶた書房)、旅のコミックエッセイ「女一匹シベリア鉄道の旅」、「女一匹シルクロードの旅」、「女一匹冬のシベリア鉄道の旅」「女一匹冬のシベリア鉄道 特製余録」「北欧!自由気ままに子連れ旅」(イースト・プレス)出版。


 

チョコレート工房

元はイラン料理屋さんだった広めの空間は、雰囲気の良いカフェと、奥はチョコレート作りのさっぱりとした工房に。

ロマンさん(絵:織田博子)

オーナーのロマンさん1人で切り盛りする工房です。

テイスティングできるチョコレートバー。
食べてみると、カカオの香りが際立ちます。

普段食べているチョコレートもカカオの香りがするけど、純度を上げたみたいな感じ。香り高いチョコです。

そして隣のチョコを食べてみてびっくり。
同じカカオからできても、こんなに味が違うものなんだ!
コーヒーも焙煎で味がだいぶ変わるのは知っていたけど、チョコは発酵と焙煎で全然味が変わるみたい。

オーナーのロマンさんに話を聞いてみました。

ロマンさんとチョコレートの出会い


どうしてチョコを作り始めたのか、どうしてここにお店を作ろうと思ったのか?
経歴を教えてください。

ソ連・モスクワに生まれました。90年代後半にロシアを出て、オランダの会社で働き始めました。鉱業関連の会社で、輸出入も行なっていました。

その後インダストリアルデザインの勉強をし、イタリア・フィレンツェで自動車メーカーで働きます。その後バンコクに渡り、宝石学を学びます。

インターナショナルな経歴ですね。

そうです。「私はロシア人だ」とラベルを貼ることは意味がないと思っています。人生はもっと複雑なものですから

その後バンコクで宝石の輸出入の会社を初め、中南米など発展途上国にいろいろ行きました。

それらの国はで宝石を扱っていましたが、同時にカカオを扱っている国でもあったのです。

カカオはまるで宝石のように大切に扱われていて、私はこの豆からチョコレートができるということを知り、興味を持ちました

生豆を食べると、同じ国でも産地によって全然味が違うんです。それが奥が深くて、面白いと思いました。

2010年当時、アメリカの「Chocolate Alchemy」というグループが「家でカカオからチョコレートを作る」(Bean to bar)ということをしていて、彼らと仲良くなってチョコを作り始めました。

彼らは今では大変有名になっています。

いつ来日されたのですか。

バンコクでの同僚が日本人で、縁があって彼女と結婚したので来日しました。
宝石のサイドビジネスとしてチョコレートの工房を作ろうと思ったのが2019年です。

京都での経験から、チョコレート作りには広いスペースが必要だと思いました。
2019年9月に現在の場所を借りて、2020年3月頃までにチョコレートに必要な器具をスイスなどから揃えました。
準備は焦らず、たっぷり時間をかけました。良い器具でチョコレートを作ることが大事だと思ったからです。

2020年6月、いよいよオープンになった時には、新型コロナウイルス流行の真っ最中でした。
宝石会社のあるバンコクに行けなくなってしまったので、必然的にチョコレートに集中することになりました(笑)

これは、良いタイミングだったのだと思います。

お店のモットーはありますか。

根本は、チョコレートを好きになって欲しいということ。

チョコレートは楽しいものです。人と人の距離を近づけてくれると思います。

また、宝石と違って、広い年齢層の人が楽しめるものだと感じています。


また、このお店は「体験できる」ことを大切にしています。

「コミュニケーションがない製品は、死んだ製品だ」と考えています。
私が作って、それをお客さんにストーリーとともに直接届けるところに、意味があると思っています。


工場で大量に作り、いろんなところで販売する。その方がビジネス的には成功することは知っています。

でも、そこにはコミュニケーションがない。
また、「新しくない」と感じます。
そこにはイノベーションがない。私がやる意味はないでしょう。

工房で私が作り、私が販売する。買う人の顔が見える

そこに新しさがあると思います。

農園とコミュニケーションをとることも重要だと思っています。

このチョコレートは、ニカラグアのカカオ農園から直接買い付け、私が成田まで取りに行きました。

カカオは、同じ農園で栽培したものでも、年によって味が微妙に異なります。今年のカカオが美味しくても、来年のカカオがおいしいとは限らないのです。

そのため、違う世代のカカオが混ざらないようにしてもらうことが重要です。直接買い付け、また良い値段で買うことで、純度の高いカカオを手に入れることができるのです。

この場所を選んだ理由はありますか。

高級なエリアにお店を出し、高級な品物を売ったり、
人気のスポットにお店を出し、たくさんの品物を売ったりすることも考えました。

でも、私は「気軽に本格的なチョコレートを食べる」という体験を作りたいと思いました。

アイスクリームは290円で、チョコレートバーは380円で買うことができます。

近くに住む人が、気軽に寄って、チョコレートを買っていく。小さなキャンディショップのようなお店にしたかったんです。

こんなことがありました。
この坂を登っていくと、学校があります。親子づれがきて、子供がチョコレートアイスを注文する。

大人は「子供にとってはあまり親しみのない味じゃないかな?」と心配します。子供たちは一口食べて、ちょっとびっくりする。でも、その後、全部食べてしまうんです。

この場所でお店をやっていることで、何か発見はありますか。


東京は、高級住宅街と庶民的な街が混ざり合っているところがユニークです。
他の国では、そのようなエリアはきれいに分かれていて、混ざってはいないですね。

このエリアは人種も様々なところが面白いですね。多国籍なのが楽しいです。

この近くでお気に入りのお店はありますか。


お気に入りのお店は「ぼんご」。たぶん、おにぎりの工房ですよね。すじこ入りおにぎりがお気に入りで、よく行きます。

あと、大塚駅の「やっぱりインディア」
昔インド系の会社にいて、インドにもよく行ったのですが、ここのカレーはインド本場の味だと感じます。

インタビュー風景

熱い思いをもったロマンさんのお店が、上池袋にある幸せ

「上池袋にロシアのチョコレート屋さんができた」という、不思議な情報に惹かれて行ってみた私。想像以上にインターナショナルで自由な心をもつロマンさんの熱い思いを聞くことができ、記事にまとめてみました。

英語で行われたこのインタビューは、私の実力不足で細かいところを聞き逃してしまい、悔しい思いをしました。

しかし、職人気質で実直なロマンさんが語る言葉には、言語を超えて迫ってくるような気迫があります。

「コミュニケーションがない製品は、死んだ製品です」という言葉が深く印象に残ります。

この場所で、自分が作ったチョコレートを、自分の手で、ストーリーと共に販売したい。
そんな思いが伝わってきます。

一見、アーティスティックでロマンティックなこの言葉も、インタビューを通してビジネスマンの一面も垣間見た私にとっては「これからの新しい製品は、コミュニケーションがないといけない」という強いメッセージに感じられました。


「日本でも、昔は同じだったと思います」とロマンさん。

身近な人が作り、売るという、個人商店や商店街のスタイルを思い浮かべました。昔からあるスタイルが逆に「新しい」と感じる。私も日々感じていることなので、共感しました。


このインタビューのきっかけとなったのも、ロマンさんの何気ない、でも力強い一言でした。

初めてお店を訪問した私が「チョコレートってスイスやベルギーのイメージでした。ロシアというのが意外」とこぼすと、

「チョコレートに国境はないんですよ」


この一言に、ロマンさんがチョコレートに人生をかけようと思ったきっかけや、真摯にチョコレートに向き合う姿勢を感じました。

カカオ工房トリビュート 概要

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