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特集記事

「中央アジアのソウルフード、羊肉炊き込みご飯『プロフ』を和食に」――「おいしい中央アジア協会」の壮大な野望・インタビュー

投稿日:2018-06-15 更新日:

今、池ブルックリンでは「羊肉」がアツい

豊島区には、様々な国の人(108か国!)が住み、その人たちの胃袋を満たす各国のレストランがあります。

そんなレストランで最近人気の「羊肉料理」。
最近の羊肉は臭みが少なく、美容や健康に良いために日本人にも人気です。

と、いうわけで、最近注目される「羊肉」を特集している池ブルックリン・プロジェクトでは、羊肉を昔から食べていた地域「中央アジア」にフォーカス。

日本に中央アジア料理を広める活動をしている、「おいしい中央アジア協会」にインタビューを敢行しました。

中央アジアってどこ?

ユーラシア大陸の中心、中央アジア。

実は、中央アジアの料理は羊肉をふんだんに使っていて、しかもスパイスが少なく辛くないという、日本人にも親しみやすくおいしい料理が多いのです。

中央アジア料理の代表「プロフ」。羊肉と野菜を米と一緒に炊き込んだ料理

「中央アジアの料理のおいしさを伝えたい」というモットーを掲げて活動する「おいしい中央アジア協会」。

おいしい中央アジア協会イメージイラスト

山田会長(MIOSK*在住)(左)と先崎専務(右)

*MIOSK(ミオスク)…豊島区内の山手線の駅の頭文字を並べた言葉。「目白」「池袋」「大塚」「巣鴨」「駒込」

会長の山田有佐子さんはブログ「Asalhonの本格ウズベキスタン料理」で本場のレシピを作りやすくアレンジしたレシピを多数公開しています。

電子レンジで簡単に作れちゃうウズベク風プロフのレシピ

また、専務の先崎将弘さんは、中央アジア食文化研究家として活動。

著書「美味しい中央アジア―食と歴史の旅 」は、豊富な知識とフィールドワークによって得られた知見にもとづいた、中央アジア料理の教科書と呼べる名著です。

そんな羊肉界の新星「おいしい中央アジア協会」のお二人にインタビューを行いました。

―今日はお忙しい中ありがとうございます。まず、中央アジア料理とはどのような料理なのかお教えいただけますか?

その質問、よく聞かれるので、こんな地図を用意してきました。
まずは、中央アジアの地域について説明します。

中央アジアとは、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンの5ヵ国を指します。

北部に位置する「草原で家畜を遊牧する民族」と、南部の「農耕をおこなう民族」に分かれます。
そのため、2つの異なる食文化が混在しています。

初歩的な質問ですが、「スタン」とはどういう意味ですか?

「国」という意味です。
北部の遊牧民族の食文化が、羊肉をよく食べる文化です。
この辺りは、「美味しい中央アジア」という本を上梓されている先崎さんの方が詳しいですね。

 

南部ではあまり羊肉を食べていなかったということでしょうか。

いえ、そんなことはなくてですね。もともと、北部では羊の遊牧をしていました。それを、オアシスに住む定住民(南部)が市場で買うんです。遊牧民はそれによって現金や小麦、農産物を得るという経済活動が行われてきました。

もともと、遊牧民族と農耕民族は敵対関係にありました。遊牧民は機動力や軍事力に優れ、農耕民族の住むオアシスを襲撃し、富を奪うということをしていました。

ただしそれではうまく行かないので、遊牧民族は農耕民族の交易を軍事力によって守り、農耕民族はオアシスで得た富を遊牧民族に支払うという利害関係が成立したんです。

この地域が羊肉を多く食べるというのは、イスラム教の影響はあるのでしょうか?

イスラム教自体は7世紀に出てきた、比較的新しい宗教です。しかし、遊牧民族はもっと古い時代から中央アジアで遊牧を行っていますので、イスラム化するよりも前から羊肉は身近な食べ物でした。

遊牧民族は羊肉を、農耕民族は米や小麦を交換することで経済関係が成り立っていました。

一言に「中央アジア」といっても、多様な食文化があるのですね。
特に、「おいしい中央アジア協会」が推薦している料理「プロフ」についてお聞かせいただけますか?

羊肉と人参、玉ねぎなどの野菜を油で揚げ、米と炊き込んだ料理です。「プラウ」「ポロ」「オシュ」などとも呼ばれます。

 

 

いつごろから食べられているのですか?

米は、かなり古い時代から中国南部で食べられている食材です。それが長い時間をかけて中央アジアに伝播し、中央アジアで米を使うようになったのではないでしょうか。

実は、東アジアと西アジアで、米の調理方法は大きく異なります。
東アジアでは、私たちが普段食べている通り、白い米を水で炊く(ゆでる)という形です。
一方、インド以西のアジアでは、具材を大量の油で揚げ、うまみが凝縮した油と米で炊き込むという手法をとっています。油で炊き込むようなイメージです。

「油で炊き込む」というとイメージがわきにくいですが、スペインのパエリアと似ているような感じでしょうか。

もともとイベリア半島はムスリムが住む地域だったので、その名残が残っているのかもしれません。西アジアの「ピラフ」が北アフリカ経由でイスラム教を介して伝わったとも考えられます。

 

日本ではまだメジャーではない中央アジアの地域ですが、山田さんが中央アジア料理にはまったきっかけは何でしょうか?

私は大学でロシア語を専攻していたので、卒業旅行にロシア語圏であるウズベキスタンを訪れました。ウズベク人の友人に結婚式に招かれ、プロフを食べたときに、あまりのおいしさに衝撃を受けたんです。
それまでも、ロシアでプロフを食べたことがあったのですが、本場のプロフのおいしさは格別でした。

プロフは、結婚式の時に食べる料理なんですか?

普段もよく食べますが、結婚式の時には必ず食べます。その時は、米100㎏、にんじん100kg、羊2頭を使ったそうです。

 

 

にんじん100kgに、羊2頭!大きな結婚式だったんですね。

いえ、それでも少ない方だったそうです。300~500人を招いたと言っていました。でも、派手な結婚式だと1,000人くらい呼びます。中央アジアの結婚式はたくさんの人を招いて行うのが普通なのです。

 

プロフの作り方についてお聞かせください。

鍋で炊き込む方法です。慣れていないと、水加減、火加減が難しい。
なので、炊飯器で作る方法を母と一緒に考案しました。

 

 

炊飯器で作ろうと思うくらい、山田さんは日本でも日常的にプロフを食べていたんですね。

週1回くらいで(笑)。そのうち、「炊飯器でも時間がかかるな」と思って電子レンジで炊く方法を開発しました。
鍋だと1時間ほどかかるのですが、電子レンジだと13分でできます。

 

山田さん特製の「電子レンジプロフ」、現地の方の反応はどうでしたか?

「えっ?!これ…電子レンジで?!」「その発想なかった」
味も「普通で鍋で炊いたのと変わらない」と好評でした。

 

 

電子レンジで簡単に作れちゃうウズベク風プロフのレシピ

プロフは特殊な米で作るんですか?

よく、「タイ米やバスマティライスで作るんですか?」と聞かれるんですけど、現地でも日本米と一緒の米で作っています。
現地の人が、プロフを作るときにおすすめな日本米のブランドは「ななつぼし」(北海道)、「さいのかがやき」(埼玉県)と言っていました。

私は、「つや姫」(山形)が好きです(笑)ねばりが少なく、現地っぽい味になります。

豊島区でプロフを食べられるところはありますか?

巣鴨の「レイハン ウイグルレストラン」(ウイグル料理)。
また、高田馬場ですが「ウルムチ フード&ティー」(新疆ウイグル自治区料理)。

 

ありがとうございます。「ウルムチ フード&ティー」は新宿区ですが、東京さくらトラム(都電荒川線)で豊島区内から行けますね。

「MIOSK」の「S」は新宿区の「S」でいいんじゃないですか(笑)

 

 

(笑)「豊島区の隣」ということで。

ウズベキスタンの料理が食べられるのは東京駅の「アロヒディン」。

 

 

あとはロシア料理レストランで出している場合があります。渋谷の「ロゴスキー」、神保町の「サラファン」。

 

 

意外とプロフが食べられるところがあるんですね。
代々木公園などで行われる料理フェスタなどで中央アジアの料理が出ることはありますか?

中央アジア単体ではないですね。でも、「おいしい中央アジア協会」で昨年「羊フェスタ」(2017/11・なかのアンテナストリート)に出展しました。去年は2万人ほど来場があったそうです。

 

2万人も!羊好きの人は意外と多いんですね。

羊肉の有名なレストランなどは、行列ができていました。

「おいしい中央アジア協会」は比較的お客さんが少なかったのですが、それでも2日間で1,000食が売り切れてしまいました。合計70kgの羊肉を調理しました。

70kg…!!羊1頭分くらいは軽くありそうです。
メニューはどのようなものを出されたのですか。

「カザン・カボブ」という、羊の肉じゃが的な料理を出しました。また、羊串「ルーリャ・カボブ」を出しました。

羊串というと、炭火で焼いたケバブのような料理を想像されるかもしれませんが、羊のひき肉を「つくね」のように串に巻き付け、油で揚げた後に、「カザン・カボブ」の上において蒸しました。焼いた肉よりもやわらかいので、子どもでも食べやすかったようです。

このイベントのために、キルギスから鍋を直輸入したんです。直径60㎝の鉄鍋です。

 

 

ひぇ~~!重そう!

ちょうどおととい、協会でBBQをして、この鍋を使ってプロフをたきました。その時の様子がこちらです。

 

 

何人分ですか?!

70人分です(笑)。肉、にんじん、米それぞれ6kgずつ使いました。

 

 

力仕事になるので、この料理を現地で作るときは、男の人が料理することが多いです。

 

 

ウズベク人のオビドさんという方に調理を監修していただいたのですが、彼が「プロフ奉行」で(笑)

 

 

プロフ奉行!(笑)

オビドさんの奥さん(日本人)が、「にんじんを切るのを手伝おうか?」というと「切った形がそろわないとイヤだから、切らないで」と奉行が(笑)

 

 

プロフというのは中央アジアのソウルフードなので、こだわりも強いんでしょうね。.

ところで、プロフは別名「オシュ」とも呼ばれるのですが、この言葉は「食べ物」という意味もあります。

日本人の「ごはん」と「ご飯」が一緒であることと近いですね。

「一番のごちそう」なので、招いた家の主人が作ります。

 

 

でも、結婚式などの「ここぞ!」って時は男性がでしゃばって作るんですけど、普段のプロフは女性が作っています(笑)

 

 

「男性も、普段から作れよ!」って(笑)

ちょうど、2016年にUNESCOの「無形文化遺産」に、ウズベキスタンのプロフ、タジキスタンのプロフはそれぞれ登録されているんです。別々の項目でわざわざ登録するところに、国家間の確執をちょっと感じますが(笑)

 

国や地域ごとに入る具材も微妙に変わります。タジキスタンのプロフには唐辛子が入っており、辛いそうです。

(※普通のプロフに入れる香辛料はクミン、塩などで、唐辛子を入れることはない)

また、メギというベリー系の甘いものを入れるのもタジキスタンです。炊き込みご飯に甘いものを入れるのは、イランの影響もあるのではないでしょうか。

 

カザフスタン、キルギスのプロフにはクミンが入らず、塩のみの場合が多いです。

 

 

羊といえばクミンのイメージがありましたが、クミンを入れない地域もあるんですね。
巣鴨の「レイハン ウイグルレストラン」では、「肉なしプロフ」があり、これもびっくりしました。
多種多様なレシピのあるプロフですが、プロフに必ず入っているものは何でしょうか。

羊肉、にんじんを大量に使います。あと米。

にんじんはアフガニスタン原産なので、まさに地域の生んだ料理と言えます。

 

少し話題が戻ってしまうのですが、70人分のプロフをたいたBBQの会についてもう少しお聞かせいただけますか?

シャシリクという羊串を焼きました。日本では「ケバブ」と呼ばれている料理です。

また、先ほどの巨大鍋でプロフを炊いた写真でBBQのイベント告知をしたら「まさに『乙嫁語り*』の世界!」とファン層に受けました。60人定員のイベントでしたが、キャンセル待ちが出るほどでした。

*「乙嫁語り」…森薫のマンガ作品。19世紀頃の中央アジアの、様々な部族の花嫁たちの物語。美しい民族衣装の緻密な描写と、生き生きとしたキャラクターたちが魅力。

あまりメジャーでなかった中央アジアという地域が、「乙嫁語り」という作品で脚光を浴びたような感じでしょうか。

そうですね、森薫先生さまさまです(笑)。会場でもファンの方が「プロフにハミ瓜(メロン)は入れないんですか?!」(原作のマンガの1シーンのセリフ)って。

オビドさんがまじめに「入れません」と答えていましたけど(笑)

羊肉は美容的・健康的観点からも注目を浴びていますが、羊肉会にそのような影響を感じますか?

実は、中央アジア料理は油をたっぷり使うので、美容的・健康的にはどうかなと…(笑)

ただ、昔のように「羊肉は臭い」というイメージは払しょくされてきていると思います。あの羊独特のにおいは、冷凍技術、保存技術の低さのために発生しがちでした。

技術が向上してきて、「羊肉は適切に扱えば臭くない」と知ってもらえるのは嬉しいです。

今後、協会が目指しているのはどのような方向ですか?

「100年後に、プロフが和食になること」。普通の食卓に上がるようになって、「プロフって、中央アジア料理だったの?!」となることが目標です。カレーのように。

そのためには50年後には「週1回、プロフが食卓に上がる」というところを目指していて、そのために今できることはなんだろう、と日々考えています。

「あなたにとってプロフとは?」という質問が浮かびました(笑)

(笑)なんかカッコいいこと言ってください、先崎さん。

 

 

やはり、ソウルフードですかね。

 

 

先崎さんも、週1回食べているんですよね?

(目が泳いで)…もちろん!(笑)
でも、会長のレシピでよく作りますね。

 

 

(笑)会長にとってプロフとは。

これからも進化していく、ポテンシャルのある料理。日本人がアレンジしても、受け入れられる懐の深さがあります。

私も羊肉の代わりに鶏肉を使ってみたり、ターメリック(ウコン)を入れて「黄金のプロフ」を作ったり。

日本人の方もレシピを進化させ、「うちのプロフ」を作っていっていただければ、と。豊島区特産の食材を使って「池ブルックリン・プロフ」を作ったりとか(笑)

(今日初めてプロフを知った池ブルックリン・メンバーの吉冨)
肉の代わりに、魚を使うのもありでしょうか?
サバ缶プロフとか、おいしそう。

いいですね!そういう、柔軟な発想がプロフ界に求められています。

後日、吉冨さんが作った「沖縄風プロフ(サバ缶入り)」

今日は、非常に興味深い話をありがとうございました。羊肉の未来を感じさせるお話をいろいろ伺うことができました。

羊肉を食べに行こう

思いがけず1時間以上にわたる大ボリュームのインタビューになりました。
「おいしい中央アジア協会」は、料理イベントやトークイベントなど、活発に開催しています。

今回のインタビューで羊肉を食べてみたくなったら、ぜひ「おいしい中央アジア協会」のイベントに遊びに行ってみてください!

知らない世界の扉がバンバン開き、「自分の知ってる世界はまだまだ小さかった…!」と感じること請け合いです。


中央アジア料理動画(おいしい中央アジア協会、外務省、グローバルフォーラム共同作成)

「おいしい中央アジア協会」公式サイト

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